コロナ病棟

恐ろしいハッピーハイポキシア

こんにちは、もここです。

コロナで入院中の患者さんは、心電図・酸素飽和度の値を24時間モニタリングしていて、異常がないか常にチェックしています。

 

先日、モニター画面上、Sp02(酸素飽和度)=85%前後を示す値があり、考えられる原因として

  1. 呼吸状態の悪化
  2. 動いたあと(トイレの後など)
  3. きちんとモニタリングされていない

などを考え、まず患者さんのところへ行き、状態を確認しました。

(Sp02の正常値=99〜96%、90%以下の場合、十分な酸素を全身に送れていない可能性がある。)

 

ベッドサイドに行くと、その患者さんはベッド上でマンガを読んでいて、普段と何も変わらない状態で過ごされていて、呼吸器症状(息苦しさ・息切れ・頻呼吸・咳嗽など)がないため、「呼吸状態の悪化」は今のところ考えにくいと判断しました。

 

次に患者さんに今までどのように過ごしていたか確認すると、「ベッドの上でずっとマンガを読んでいた」と話され、「動いたあと」によるSp02値低下でもなく、あとはきちんとモニタリングされていないのかなと考え、装着部位、接続部を確認しましたが、全く問題なく、モニタリングされている波形がきちんと表示されていました。

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状況がいまいち理解できないままとりあえず主治医に報告、酸素投与開始し、しばらく様子を見ることになりましたが、酸素を投与しても一時的にSp02値は改善されるのですが、時間が経つとSp02値がまた80%へ低下し、徐々に酸素流量を増量していく必要がありました。

 

うちの病院は中等症までの受け入れなので、酸素投与が6L以上必要になれば重症患者受け入れ病院へ転院することになっています。(延命治療を希望される患者さんのみ)

 

本来なら酸素投与が6L必要の患者さんは、息苦しさ・息切れ・頻呼吸を認め、とても苦しそうにされていることが多いのですが、この患者さんは、酸素が6L必要な状態でもケロッとされていて、スマホをいじったり、マンガを読んだりしていて、しんどくないか尋ねても「何ともないです。昨日より楽になった感じ」と笑顔で話されていました。

 

あまりにも患者さんの状態とSp02値が示す状態が違い過ぎいるので、血液ガスを採取しデーターをチェックしましたが、血液ガスデーターも酸素化不良の値がでており、呼吸器症状はでていないが、明らかに呼吸状態が悪化していることを確認しました。

酸素10Lまで増量したところで、転院先が見つかり無事搬送となりましたが、その間も患者さんは、スマホのテレビ電話でご家族さんと会話をされていて、会話中も息切れ、息苦しさも訴えることもなく、最後まで普段と変わらない様子で過ごされていました。

 

一体、この患者さんに何が起こっていたのか医師に尋ねると、

 

「ハッピーハイポキシアですね」と。

 

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ハッピーハイポキシアとは、血中の酸素が不足しているのに、呼吸困難にならない、自覚症状がなく、苦しくないため「幸せな低酸素症」と呼ばれています。

 

記憶に新しいのが、昨年12月の羽田雄一郎参院議員(享年53)の死去です。数日前から発熱や倦怠感といった症状があり、PCR検査を受けるため病院に向かおうとしていたが、突然呼吸が荒くなり「俺、肺炎かな」と口にした直後、意識を失い、搬送先の病院に到着する前に死亡されました。

おそらくハッピーハイポキシアに陥っていた可能性があると言われています。

また、コロナに感染した患者さんが、自宅療養中に無症状や軽症だと思い込み、本人が気付かないまま重篤になり、自宅で死亡していたケースが相次いでいるそうです。

最近では自治体がパルスオキシメーターの貸し出しをおこなっており、患者さん自身でSp02値の測定をおこない、自宅で急変するケースを少しでも減らそうと取り組みをおこなっています。

 

ハッピーハイポキシアって名前はかわいいですが、医療従事者としては本当に恐ろしく、症状がないからといって、安易に呼吸状態は問題ないと判断してはいけないことを改めて再認識しました。

決して幸せな症状とは言い難いです。

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